映画「Mercy/マーシー AI裁判」感想
この記事にはネタバレが含まれます。
「Mercy/マーシー AI裁判」を見た。クリス・プラット主演のAIによる裁判をテーマにしたサスペンス映画。
エンタメとしては予算潤沢な演出だしミステリー的などんでん返しがなんどもありで楽しめたけど、AI裁判官の設定というか性能がツッコミどころ多すぎてSFとしては作りこみが甘すぎるという感じだった。まあエンタメとしては正確さよりはわかりやすさだろうからまあ……。
まずクリス・プラット演じるAI裁判にかけられた主人公の刑事が記憶を失ってるのかと思ったら実は憶えていたりで信用できない語り手なのが後から開示されてるのは良くないよなぁと思った。あれのせいでちょっと主人公への自己投影が剥がれる感じがある。
あとAI裁判官がちょっとAIらしい融通の利かなさと感情の獲得への揺れみたいな演出とでなんかエンタメ特有のAIだなぁと思った。まあこれはよくある設定だからあれだけど。
あと調査能力があるのかないのかわからん感じとか、超法規的措置であらゆるネットワークの情報にアクセスできるにしても被告人に見せちゃダメだろみたいなとことか、結局自己弁護しないと情報にアクセスしない被告人の能力に依存しすぎているところとかひどいなぁという感じ。
まあ無実の罪を有罪にしてしまうのは人間でも同じだけど、犯罪率が高すぎるからってたった18件のうちに無実の人をすでに処刑してたりとか欠陥システム過ぎる。しかも最終的にその欠陥システムは多少アップデートはされたものの継続して利用されるみたいな終わり方だったし。
結局「人もAIも間違うから都度反省してアップデートしていこうね」という凡庸なテーマを派手な演出でエンタメ化したぐらいの映画だった。まあエンタメとしては面白かったけど、振り返るとツッコミどころが多かったね。
しかしAI裁判は捕まえた後のはなしであって、1時間半程度の裁判で犯罪者と思われる人物をどんどん処刑してしまって刑務所の回転率を上げようぜ!ってディストピアがこの世界の標準になってる時点でもうおわりだよってところである。AIというか社会の標準的な感覚が終わってるわという。そこの前提はけっこう無視されてたような。
まあアメリカがもうずいぶん無茶苦茶だから、こんな無茶苦茶な世界観でも秩序が保たれてるだけましみたいな感じなのかな。世も末だ。
しかし裁判の時間が1時間半で、映画もだいたい同じ1時間39分で終わるのは作りとして丁寧だなと思った。設定にツッコミどころはあるものの、順番に謎が分かっていくのは面白かったし、時間に追われている感じでハラハラさせるのはサスペンスとして上手だったし、明らかに有罪っぽい主人公に時間いっぱいはトライさせるように促してたりと非人間的かつ公平であることがAIらしさとしてでてたりと要点は抑えていた感じ。
まあ今の世相であるAIというテーマをいい感じに誇張してエンタメ化した映画としてはよかったんじゃないかなという総評。